今こそ論じるべき SKAdNetwork の重大な問題


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Apple のプライバシーポリシーが間もなく変更される予定です。Aarki では、この変更が広告業界に与える影響の全体像を把握するため、MMP広告エクスチェンジDSP のそれぞれに着目した全 3 編の記事を公開しております。

今回のボーナス記事では、Aarki のプロダクト責任者Nicol Cseko との議論をふまえ、これまで看過されることの多かった SKAdNetwork の重要なポイントをお届けいたします。

SKAdNetwork がマーケティング・アトリビューションに与える影響と、トラッキングするイベントを適切に選択する方法については、多くの議論がなされています。しかし、より一般的なコンバージョン・モデルを今回の変更に適応させるにあたっての困難や考慮点については、直接的な議論があまりなされていません。今回の記事では、その空白を埋めることを目指します。

  1. SKAdNetwork の時間ベースのコンバージョン・トラッキングモデルには、多くの難点やトレードオフがついて回ります。計測内容を決めるにしても、今と同じような項目をトラッキングすれば済むとは限りません。多くの広告主様が今なお、データサイエンスの専門知識なしに構築でき、かつ有効に働くモデルを見つけるのに苦労しておられます。アプリごとに状況は異なってくるものの、広告主の皆様にご検討いただきたい一般的なポイントが 3 つございます。

    新体制の下では、これまでと同じ KPI(重要業績評価指標)に合わせて最適化すればいいとは限りません。例えば、現在 ROAS に合わせて最適化している場合は、SKAdNetwork で収益を増やす、またはユーザーを収益ごとに振り分けるモデルを選択し、コンバージョン値を利用してこれらの収益シグナルのみをトラッキングすればよいと思いがちです。しかしこのようなモデルでは、典型的/ターゲットユーザーの収益曲線と、選択したコンバージョン遅延を考慮に入れる必要があります。例えば、ユーザーがアプリをダウンロードして 3~5 日経つまで購入を行わないにもかかわらず、SKAdNetwork でダウンロード後 24 時間の収益トラッキングしか行っていない場合は、有用なデータが得られません。ダウンロード後 24 時間以内に相当数の購入が確認できる場合も、コンバージョン値によって決まるコホートが、Apple が指定するプライバシーの閾値を満たしていなければなりません。コンバージョン値がオーディエンスのごく一部のみに対応している場合は、この条件を満たすことが難しくなります。

    ここで必要なのは戦略を練り直すことです。先述の例を再考してみましょう。広告主が収益を上げることを究極目標としているものの、SKAdNetwork で直接計測することにメリットがない場合は、他のイベントを計測するとよいでしょう。この例の場合は、ダウンストリーム収益やライフタイムバリュー(LTV)を示す早期指標を特定し、これらの指標をコンバージョン値にエンコードすることをおすすめします。なお、これらの早期指標が SKAdNetwork の計測期間やプライバシーの閾値に適合するよう注意する必要があります。

    また、コンバージョン値のビット数を最大限に利用し、2 タイプ以上のコンバージョン・モデルをトラッキングすることをおすすめいたします。収益、エンゲージメント、特定のアクション、期間などを合わせてトラッキングすると、購入パートナーが多様なパターンで柔軟にキャンペーン最適化テストを行えるようになります。

  2. SKAdNetwork 2.2 が普及するまでは、アトリビューションのソースとして、あるいはコンバージョン計画に際して、SKAdNetwork に信頼を置きづらいです。

    SKAdNetwork アトリビューションを広くテストし、LAT ユーザーと非 LAT ユーザーの両方について MMP アトリビューションとの比較を行った結果、ほとんどのアプリについて、これら 2 つのインストール・ソースの間でインストール数に大きな分散が見られました。なお Apple ではログレベルのデータを取得して分析できないため、現時点では MMP インストールとの完全な比較が不可能である点が障壁となっています。以下、Aarki の分析内容を一部ご紹介いたします。

    - 分散の主な原因は、現在の SKAdNetwork でビュースルー・アトリビューション(VTA)がサポートされていないことです。幸いなことに、SKAdNetwork バージョン 2.2 では VTA 対応が予定されています。しかし短期的に言えば、サプライ側でバージョン 2.2 が広くサポートされるようになるまではインストールの相当数がアトリビュートされないことになるため、移行期を通してそれなりの混乱が予想されます。CPI などの指標をベンチマーキングしている広告主様は、このことを考慮に入れる必要があります。さらに、バージョン 2.2 に対応するには、サプライ側でパブリッシャーが改めて SDK アップデートを行う必要が出てくるため、VTA アトリビューションが広く利用できるようになるには数カ月を要するものと予測されます。

     - SKAdNetwork でクリックベース・アトリビューションを比較する場合にも、LAT キャンペーンと非 LAT キャンペーンの両方において、広告主間で大きな分散が見られました。かなりの分散が SKAdNetwork アトリビューションの実装エラーに由来しているため、アプリ広告主様におかれましては、これらの数値を注視されることをおすすめいたします。

  3. スパースシグナルは最大の予算を擁する広告主にのみ有利に働くのか?

    コンバージョン・イベントに関する Apple のプライバシー閾値をふまえると、スケールや予算の限られている小規模広告主は、コンバージョンだけにとどまらない最適化を目指すにあたり、大規模広告主と比べて困難を強いられることになるのでしょうか? こういった広告主様は、Apple がキャンペーン ID ごとにコンバージョン・イベントに課したと思われる重要なプライバシー閾値に対応するに十分な予算がない場合、とにかく最適化できるだけのコンバージョン値を獲得するべく、SKAdNetwork でトラッキングするイベントを(有用性が低減する可能性があるとしても)より広い規模をカバーするように定義しなければならず、厳しい選択を強いられることになりそうです。予算が潤沢であればインストール後の行動にもフォーカスできますが、予算に余裕のない広告主はインストールにのみ焦点を絞ることを余儀なくされるのでしょうか? Apple のアトリビューションは、今日の洗練されたモバイル・マーケティング・エコシステムの中で、限られた予算をものともせず効果的にターゲット・ユーザーにリーチできていた小規模アプリ・デベロッパーを苦しめる可能性もあります。

Apple のプライバシーポリシー変更がモバイル広告業界に与える影響の全体像は、もうじき明らかになります。その前にあらゆる可能性を検討し、移行がスムーズに進むよう準備を整えておくことをおすすめいたします。

Topics: Marketplace Insights